ファッション雑誌「SENSE(センス)4月号」にアイランドタワークリニックが紹介されました。
以下本文引用
第二回
毛髪業界の夢と現実
飲むだけでニョキニョキと毛髪が生えてくる、といった「毛生え薬」は毛髪業界では
究極の理想ですが(笑)、なかなかそうもいかないのが現実。今回は最新の再生医療に
ついてと、現状できる最大限効果が見込める治療法についてお話しましょう。
例えば、人の細胞から、皮膚や臓器、角膜など体の一部を再生するこ
とができたら……。こうした技術は「再生医療」と呼ばれ、日夜研究が
進められています。火傷で失われた皮膚を移植ではなく、再生させるこ
とで治療する。きっとこうした治療を待ち望んでいる人は多いでしょう。
そして、再生医療は毛髪業界においても毛髪再生のため「いつかきっ
と!」と、何十年も前から研究が重ねられています。一本の毛髪を何百
本、何千本と増やすことができれば、もう抜けることを心配する必要なん
てなくなりますね!
しかし、実際はなかなか上手くはいきません。今年の一月、アメリカ
の研究所が人の多能性幹細胞を使ってマウスから発毛させることに成功
した、と発表していますが、実用化にはまだまだほど遠い段階です。そ
うなると、現段階では、薄毛のメカニズムを理解した上で対処できる最
善の方法を選ぶ、という以外薄毛解決の方法はありません。
では、前回もお話しましたが、もう一度薄毛のメカニズムについて抑
えておきましょう。AGA(男性型脱毛症)の発症の原因として遺伝や
加齢のほかに、もっとも大きな影響を与えているのが男性ホルモンの
「テストステロン」が変換された「DHT」という物質です。「薄毛の原因
は男性ホルモン」と勘違いされている方も多いようですが、テストステ
ロンは男女ともに体内で作られるホルモンで、男性のほうがより多くあ
ります。実はこのホルモンが5α還元酵素という酵素に反応して作られ
る「DHT」こそが、脱毛を促すシグナルを出すのです。このDHTが、
毛乳頭にあるレセプターと反応する事で脱毛症状が起きるのですが、後
頭部や側頭部にはそのレセプターがほとんどありません。結果、前頭部
や頭頂部が薄毛状態になっていき、側頭部や後頭部が残る「波平さん」
スタイルを作ってしまうのです。
一本の毛が生まれてから抜け落ちるまでの1サイクルをヘアサイクル
と呼び、一般的なヘアサイクルは2~7年と言われていますが、先述の
DHTがこのヘアサイクルを乱し、髪の成長を終わらせてしまいます。
つまり、AGAの人は「急に生えなくなる」のではなく、ヘアサイクル
が短い為、髪の毛が太く長く成長する時間を過ごせないという事なので
す。結果、細かったり短い髪の毛が多くなり「薄く見える」状態を経て、
最終的に生えなくなっていくのです。こうやって学術的にAGAを説明
してしまうと、育毛を促進するシャンプーを使用したところで、効果が
期待できないような気がしませんか? では何なら効果があるか?
ということになるのですが、最近では、「AGA治療薬」と呼ばれる医薬
品も存在します。病院で処方してもらう薬で、私のクリニックでも扱っ
ていますが、フィナステリドを主成分に作られ、AGAの原因となるD
HTの生成を抑制する働きがあります。AGA治療薬は、テストステロ
ンに5α還元酵素が結びつくことを阻害し、血中のDHTの濃度が下が
るため、AGAを発症してしまった後でも抜け毛を防ぐ、つまり毛髪の
寿命を延ばす効果が期待できるわけです。
ただ、いくつか問題点はあります。例えば、飲み続けなければ効果は持
続しない、ということ。また、ヘアサイクルの寿命を延ばす効果はあっ
ても、全体の本数が増える効果はあまり期待できない、ということなど
です。また、プロペシアを飲んで効果が確認できるまでの目安はだいた
い6か月。なかなか時間がかかります。とはいえ、AGAの進行を指を
くわえて見ているほか術がなかった人にとって抜け毛予防効果が期待で
きる内服薬というのは、試してみる価値はあるかもしれません。
次回は毛髪医療について、もっと突っ込んだ内容でお話したいと思い
ますので、その一本で真剣にお悩みの貴方、お見逃しなく!
「薄毛」の研究の最前線はここまで進んでいるんです
AGAの進行を阻むことはできるのか?
對馬彰利医師
九州大学医学部卒業。数々の植毛クリニックで専門医として経験を積み、
2012年よりアイランドタワークリニックに勤務。
「日常的な小さな悩みの解消は将来的に良い仕事、
素敵な未来に繋がっています」。